住友大阪セメントグループのセメント関連事業は、石灰石や石炭などの地球資源を利用して事業を行う性質上、直接・間接を問わず、周辺の生態系に影響を及ぼす可能性があります。企業として事業を継続していくには、我々は、地球環境に配慮し生物多様性を保全していくことが必要不可欠と考えます。
「住友大阪セメントグループは、地球環境と事業活動の調和を図り、環境負荷の少ない生産・発電・物流の追求を通じて、豊かな社会づくりと地球環境保全に貢献します。」の環境理念のもと、鉱山や工場の周りでCO2を用いた最先端育苗技術、緑化・植林活動を実施、20年以上の実績を誇る海洋製品を展開して海の環境を回復させるなどして「ネイチャーポジティブ」を目指し、生物多様性の保全に積極的に貢献しています。
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)については、今後、このように多彩なNETs対応製品の市場化などによる当社グループの自然資本に対する影響を評価し、フレームワークに沿った開示を準備していきます。
「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加
当社は「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しています。30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、2030年までに日本全体として生物多様性の損失を食い止め、回復させるというゴールに向け、自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指した、生物多様性の為の環境省主導の取り組み目標です。

経団連生物多様性宣言イニシアチブへの賛同
当社は経団連生物多様性宣言イニシアチブ※への賛同を表明しています。当社グループの企業理念が経団連生物多様性宣言の理念と一致しており、以前より当社グループでは生物多様性の保全として、鉱山跡地の緑化活動や海洋製品事業(魚礁・藻場礁)の展開、ツシマヤマネコ保護活動を行っております。
- 経団連生物多様性宣言イニシアチブは「経団連生物多様性宣言・行動指針(改訂版)」を構成する7項目のうち複数の項目に取り組む、あるいは全体の趣旨に賛同する企業・団体が参加するものです。

「ブルーオーシャン・イニシアチブ」に参画
海洋プラスチック削減、海洋資源保全、海洋の気候変動対応などについてのアクションを行う「産官学民のネットワーク」です。当社グループは、特に同イニシアチブの海洋製品の展開方法を議論する分科会に積極的に参加しています。

「一般社団法人とちぎ百年の森をつくる会」に参画
当社は、セメント工場とバイオマス発電所のある栃木県で、森づくりを通じてカーボンニュートラルとネイチャーポジティブに資する活動を推進する一般社団法人とちぎ百年の森をつくる会(とち森会)のパートナー会員に、2024年より参画しています。実際に林業に携わるとち森会への協力を通して、森林の管理に貢献します。

陸のNETs:木質バイオマス発電所の排ガスCO2を利用した少花粉種スギの苗木促成栽培
2024年より、栃木工場内の木質バイオマス発電所排ガスCO2を利用して少花粉種スギ苗木を促成栽培するBECCS(Bioenergy withCarbon Capture and Storage)次世代型育苗システム構築に向けた実証試験に着手しました。この取り組みはセメント産業の新しい姿を示すもので、国内セメント業界では初めての取り組みです。またBECCSは近年急速に注目を集めるZEROカーボンエネルギー技術の一つで、NETsへの挑戦となるものです。
CO2施用/非施用で栽培状況にどのような影響が見られるかを検証する為、農業系ベンチャー企業の株式会社オムニア・コンチェルトとの協働により、木造の最先端実証試験用ハウスを2基設置しました。
国の少花粉化推進施策に伴う将来的な少花粉種スギの苗木需要増加に応える為、同社と連携しながら、CO2利用以外の最新技術導入も含めて次世代型高効率栽培システムの構築を目指すとともに、バイオマス発電所を核とした新たな地域共生型ソリューションを展開していきます。

栃木工場内設置 検証用小型木造農業ハウス

スギ苗木促成栽培ミニチュアハウス
陸のNETs:鉱山緑化の取り組み
滋賀県米原市に位置する伊吹鉱山では、1971年から採掘跡地の緑化事業に取り組んでいます。これは国内の鉱山において企業自らが緑化に取り組む先進的な事例であると言われています。1972年には滋賀県との間で鉱山の緑化を謳った自然環境保護協定を締結しました。国内のほかの鉱山でも採掘跡地および集積場の緑化を進めています。

伊吹鉱山(滋賀県米原市)

秋芳鉱山(山口県美祢市)
伊吹山 植生調査の実施
近年、日本の山林は鹿による森林生態系への影響が懸念されており、伊吹山全体でも下層植生の消失により、森林土壌表面の裸地化、生態系の破壊などが懸念されています。当社グループは、住友林業株式会社の協力を受け、2023年に、標高1,000m~1,200m周辺を対象として本格的な植生調査を実施。調査では、鹿の食害が確認されたものの、伊吹山固有の希少種を含む植物や、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫類が確認されました。今後、調査結果を活かし、試験的に鹿防止柵の設置や鹿害に強い苗の植樹を行うなど、伊吹山の多種多様な生態系の保全と、地元自治体や「伊吹山を守る自然再生協議会」と連携して緑化を進めていきます。

伊吹山 植生調査
海のNETs:海洋製品事業の展開
当社はグループ会社の㈱SNCと共同で、コンクリートのプレキャスト技術を応用し、日本沿海の磯焼け対策のニーズに応え、魚礁、藻場礁の製造・沈設の海洋製品事業を20年以上前から実施し、これまで長崎県を中心に3,800基以上の藻場礁の沈設実績、30万枚以上の藻場増殖プレートの販売実績があります。
当社グループは、世界で初めて実用化に成功した海藻育成手法・技術・特許を駆使して、日本の海の環境解決(気候変動対策と海の再生)を目指し、新規事業として低炭素コンクリートと組み合わせた海洋製品事業の全国展開を推進するとともに、自治体との協力*1,2を通じて生物多様性の保全とCO2排出量の削減に貢献します。
当社が世界で初めて実用化に成功した、種糸と藻場増殖プレートを用いた海藻の促成栽培手法である「垂下式中間育成」により、食害にも耐えうる確実な藻場造成を可能とします。
多機能型藻場増殖礁「K-hatリーフβ型」は、礁内で繁茂した海藻を守りつつ、周囲の岩場へ海藻の種を供給する「核藻場」として機能し、藻場再生に加え、イセエビの稚エビやアワビが外敵から身を守る「隠れ場所」を供給します。
- *1 当社は長崎県五島市より藻場の再生活動を目的として発行された「Jブルークレジット®」を2023年度に購入。
- *2 2025年の大阪・関西万博開催に併せて会場周辺海域にブルーカーボン生態系を創出する「大阪府万博会場周辺海域ブルーカーボン生態系創出事業補助金」へ応募し、2024年8月に採択されました。

藻場礁

藻場礁内のアワビ
漁場創設への取り組み
ハイブリッド⿂礁スーパーSK1300Sは、⾼さ20メートルの⼤型⿂礁であり、⿂の乱獲を防ぎながら資源を増殖していきます。⿂類の⽣態を研究した独創的な構造によって、業界ナンバーワンの集⿂能⼒を誇ります。

沈設を待つハイブリッド漁礁スーパーSK1300S
「ブルーカーボンクレジット」の購入
当社は長崎県五島市より藻場の再生活動を目的として発行された「ブルーカーボンクレジット」を2023年7月に購入しました。海洋製品事業の展開を更に推進するとともに、自治体との協力を通じて生物多様性の保全とCO2排出量の削減に一層貢献してまいります。
ツシマヤマネコ保護活動
粘⼟鉱⼭跡地で、「ツシマヤマネコ」を保護する為、⾃然環境を再⽣しています。
⻑崎県対⾺市⾈志(しゅうし)地区に、住友⼤阪セメントがセメント原料である粘⼟を採掘する⽤地として取得した森林(約16ヘクタール)があります。
しかし、セメント業界が積極的に産業廃棄物のリサイクルを進めたことで、セメント製造において使⽤していた天然の粘⼟を代替できるようになり、⼀度も粘⼟の採掘をすることなく遊休地となっていました。
この遊休地には、⽇本で最も絶滅が危惧されている種の⼀つである「ツシマヤマネコ」が⽣息していることがわかり、2007年から住友⼤阪セメントグループは、遊休地の森林の⾃然環境を守ることで保護活動への協⼒を始めました。
地元対⾺の⽅々と協⼒しながら、森の間伐やツシマヤマネコのえさとなるアカネズミなどの⼩動物が⾷べるどんぐりなどの実が育つ広葉樹の植林を⾏い、森を⼤きく育てることで、ツシマヤマネコの棲みやすい環境を⽣態系から整え、⾃然環境を再⽣しています。

国内希少野⽣動植物種ツシマヤマネコ
長崎県対馬市のみに分布
生息数は100頭弱と推定されている(環境省HPより)

(写真提供:対馬野生生物保護センター)
国内希少野生動植物種ツシマヤマネコ