気候変動に対する取り組み
(SO-CN2050戦略TCFDに基づく開示)
住友大阪セメントグループでは、地球温暖化防止の為、CO₂をはじめとする温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。
気候変動に対する取り組み ~TCFDに基づく開示~
当社は2021年7月に、金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同し、当社グループのCO₂排出量の大分部を占めるセメント事業を含むセメント関連事業、高機能品事業等、全事業における気候変動が及ぼす影響についてシナリオ分析を行いました。

ガバナンス
当社グループの気候変動問題への取組みを推進する機関として代表取締役を委員長とする「サステナブル対策委員会」を設置しています。「サステナブル対策委員会」は定期的に開催され、気候変動問題に関する情報の集約、リスクの想定、対応策の立案、社内教育・啓蒙プログラム推進等、年度活動の計画立案およびその進捗管理を行っています。サステナブル対策委員会において審議された重要な事項については、必要に応じ、取締役会へ報告し、審議されます。
また「サステナブル対策委員会」を運営し、気候変動問題を中心としたサステナビリティ課題に関する事項を専属で司る「サステナビリティ推進室」を常設組織として設置しています。
戦略(リスクと機会)
当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に、分析を行いました。
気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて2℃以下または4℃上昇するシナリオを想定し、それぞれのリスクと機会について、影響度が高いと思われる項目を抽出しました。
分類 | リスク | 機会 | ||
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移行リスク | 政策 ・規制 |
炭素税の引き上げ、温室効果ガス排出や化石エネルギーに関する規制 |
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技術 | 新技術の開発 |
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市場 | ||||
ユーザー行動の変化 |
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リサイクル市場 |
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高機能品事業 |
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評判 | ステークホルダーの評価の変化 |
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物理的リスク | 急性的 | 自然災害の頻発・激甚化 |
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慢性的 | 平均気温の上昇、慢性的な異常気象の発生 |
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2℃シナリオでは、炭素税の引き上げや化石エネルギーに関する規制が強化され、セメント製造及び自家発電設備において石炭を使用するほかに、他社石炭火力発電所から発生する石炭灰・石膏をセメント原料とする当社グループにとって、コスト増加が想定される一方で、石炭に代わる熱エネルギーとして廃プラスチックや木質バイオマス燃料の利用を高めることで、リサイクル処理収入による収益拡大と化石エネルギーによるCO₂排出量削減が期待できます。
また、CO₂の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予想されますが、同時に、技術力向上による新たな事業の創出、収益機会の獲得が期待できます。また低炭素社会への移行に際し、ユーザー行動の変容が想定されますが、製造過程でCO₂を発生するセメントを敬遠し需要が減少する可能性がある反面、アスファルト舗装よりもライフサイクルコストに優れ、気温上昇を抑える効果も有するコンクリート舗装の評価が高まり、セメント需要が増加する可能性もあります。
廃棄物/副産物の発生量が減少することが想定され、廃棄物/副産物の調達に影響を及ぼす可能性がある一方で、廃棄物/副産物処理技術の向上に伴い受入れ可能な品目が増加し、収益が期待できます。またセメント産業はCO₂を排出する産業としてステークホルダーの評価が下がり、資金調達難等が想定される反面、気候変動対策、廃棄物/副産物処理を推進することで企業評価を高めることが期待できます。
高機能品事業分野では、ライフスタイル、ワーキングスタイルの変革によるデータトラフィックの増大や脱化石エネルギー化による電力供給不足により、大容量、高速、省電力デバイスのニーズが高まり、光電子事業の光通信部品や新材料事業の半導体製造装置部品の需要増が期待できます。
4℃シナリオでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化により、生産部門での労働力への影響や生産拠点やサプライチェーンの被害増加が生じ、コスト増加が見込まれる反面、国土強靭化によるセメント関連製品や省人化工法等の需要増加が見込まれます。
リスク管理
当社グループは、サステナビリティ推進室を事務局とする「サステナブル対策委員会」においてCO₂排出量削減の計画立案、進捗管理をグループ横断的に行っています。 当社グループの事業が気候変動によって受ける影響を識別・ 評価するため、 気候変動のリスクと機会を抽出、分析し、必要に応じて「サステナブル対策委員会」や取締役会を通じて適切に対処します。
指標と目標
当社グループは企業活動を通じて重点的に取り組む社会課題であるマテリアリティ(重要課題)の一つとして「地球環境への配慮」を掲げ、リサイクルによるエネルギー代替の推進やバイオマス発電の活用など地球温暖化防止に取り組んできました。また、2020年12月には、「2050年カーボンニュートラル」に向けた具体的な中期目標並びに長期取組方針である2050年“カーボンニュートラル”ビジョン「SO-CN2050」を策定し、2050年までのあらゆる方策を通じて、当社グループの企業活動をカーボンニュートラルにすることに挑戦するとともに、サプライチェーンを通じて社会全体の脱炭素化への貢献をするための取り組みを進めています。
今後は、今回実施したシナリオ分析に基づくリスクと機会について、財務的インパクトの算出を進めるとともに、2050年 “カーボンニュートラル”ビジョン「SO-CN2050」を基盤に、リスク対応と機会獲得のための新たな対応策の検討、具体的な指標と目標であるKPI(重要業績評価指標)を設定し、その対応策を推進してまいります。
セメント⼯場における廃熱発電の活⽤
当社グループでは、セメント⽣産プロセスで、発⽣する⾼温ガスを再利⽤する廃熱発電設備を導⼊しています。
この廃熱発電を効率的に活⽤することにより、⽯炭⽕⼒発電による電⼒と⽐べ、エネルギーコストを削減し、排出される温室効果ガスも削減する事ができます。
バイオマス発電の活⽤
栃⽊⼯場の発電設備は、⽯炭(化⽯エネルギー)の代わりに、⽊質チップなどのバイオマス資源を主エネルギーとして利⽤するバイオマス発電設備で、他社に先駆けて2009年より本格稼働しています。他の⼯場でも⽯炭の補助エネルギーとしてバイオマス資源を積極的に活⽤して温室効果ガス排出削減に貢献しています。
2018年には、住友林業㈱および東⽇本旅客鉄道㈱と共同で設⽴した⼋⼾バイオマス発電㈱にて、バイオマス発電設備の営業運転を開始し、⻘森県の地域の間伐材や周辺鉄道沿線の鉄道林などを使⽤することで、環境に優しいエネルギーを創出しています。バイオマス発電設備から発⽣する焼却灰を、⼋⼾セメント㈱にてセメント製造⽤原料として再利⽤して、地域における循環型社会の構築に貢献しています。
省エネルギー設備の導⼊
当社グループの5⼯場で、全てのキルン(セメント焼成設備)で熱回収効率の良いクリンカクーラー*1を導⼊し、熱エネルギー原単位を低減したほか、冷却空気量の削減によってファンの電⼒消費量についても削減する事ができました。
岐⾩⼯場と⾚穂⼯場ではキルンバーナー*2の改良⼯事および新型バーナーの設置を⾏ってきましたが、⾼知⼯場でも新型バーナーの導⼊を予定しており、エネルギー効率改善による省エネルギーを推進します。
また、⽊質チップ、廃⽩⼟(油分を含んだ⼟壌)、廃油使⽤により⽯炭(化⽯エネルギー)代替率については国内業界トップクラスの実績をあげています。
2020‐2022年度中期経営計画では、更なる代替率向上のため、廃プラス廃プラスチック処理関連設備の増強に取り組み、⽯炭使⽤の抑制を推進し、地球温暖化防⽌に努めていきます。

赤穂工場
- *1 クリンカクーラーは、セメントキルンで焼成された⾼温クリンカを送⾵機によって供給される空気を⽤い急速冷却する装置。冷却の際に熱を吸収した⾼温空気は、キルン・仮焼炉の燃焼⽤空気として活⽤される。
- *2 キルンバーナーは、キルン内でのクリンカ焼成時に、微粉炭や代替熱エネルギーを効率的に燃焼させて⾼熱を得るための装置。