気候変動に対する取り組み(温室効果ガス排出量・TCFDに基づく開示)
住友大阪セメントグループでは、地球温暖化防止の為、CO2をはじめとする温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。
バリューチェーンにおけるCO2排出量:Scope3(2023年度)
気候変動に対する取り組み ~TCFDに基づく開示~
当社は2021年7月に、金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同し、当社グループのCO2排出量の大分部を占めるセメント事業を含むセメント関連事業、高機能品事業等、全事業における気候変動が及ぼす影響についてシナリオ分析を行いました。

ガバナンス
当社グループの気候変動問題をはじめとしたサステナビリティ課題への取り組みを推進する機関として、社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を定期的に開催しています。「サステナビリティ委員会」は下部組織の一つに、専門部会である「カーボンニュートラル・環境部会」を設置しており、「カーボンニュートラル・環境部会」はセメント・コンクリート研究所とサステナビリティ推進部の両方を統括する担当役員を部会長としており、年4回(四半期ごとに)開催され、気候変動問題に関する情報の集約、リスクの想定、対応策の立案、社内教育・啓蒙プログラム推進等、年度活動の計画立案およびその進捗管理を行っています。部会での審議を経て、サステナビリティ委員会で審議された重要な事項については、取締役会へ報告し、審議されることで当社グループの2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みを管理・監督しています。
また、サステナビリティ委員会を運営し、カーボンニュートラルや生物多様性への取り組みを中心としたサステナビリティ課題に関する事項を専属で司る「サステナビリティ推進部」を常設組織として設置しています。
サステナビリティの推進
戦略(リスクと機会)
当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)が描くシナリオを参考に、分析を行いました。
気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。2021年には地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて、2℃または4℃上昇するシナリオを想定してシナリオ分析を行いましたが、シナリオの設定を1.5℃※1または4℃※2上昇するシナリオに見直し、それぞれのリスクと機会について、影響度の評価を行いました。
【1.5℃シナリオ】※1
気候変動に対し厳しい対策が取られ、2100年時点において、産業革命時期比で気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオ。
【4℃シナリオ】※2
気候変動への厳格な対策が取られず、2100年時点において、産業革命時期比で4℃程度気温が上昇するシナリオ。
- ※1 分析に使用したシナリオは、IEA「World Energy Outlook 2022」「NZE2050(Net Zero Emissions by 2050)」
- ※2 分析に使用したシナリオは、IPCC「第5次評価報告書 RCP8.5シナリオ」など
分類 | リスク | 機会 | 1.5ºCシナリオ | 4ºCシナリオ | ||||
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ネガティブ | ポジティブ | ネガティブ | ポジティブ | |||||
移行リスク | 政策 ・規制 |
炭素税の引き上げ、温室効果ガス排出や化石エネルギーに関する規制 |
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大 | 中 | 中 | |
技術 | 新技術の開発 |
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小 | 大 | 小 | ||
市場 | ||||||||
ユーザー行動の変化 |
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大 | 小 | ||||
リサイクル市場 |
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小 | 小 | ||||
光電子・新材料事業 |
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中 | 中 | |||||
評判 | ステークホルダーの評価の変化 |
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中 | 小 | |||
物理的リスク | 急性的 | 自然災害の頻発・激甚化 |
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中 | 大 | 大 | 小 |
慢性的 | 平均気温の上昇、慢性的な異常気象の発生 |
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大 | 小 |
リスク管理
当社グループは、サステナビリティ推進部を事務局とする「サステナビリティ委員会 カーボンニュートラル・環境部会」においてCO2排出量削減の計画立案、進捗管理をグループ横断的に行っています。 当社グループの事業が気候変動によって受ける影響を識別・評価する為、気候変動のリスクと機会を抽出、分析し、必要に応じて「サステナビリティ委員会 カーボンニュートラル・環境部会」や取締役会を通じて適切に対処します。
シナリオ分析により抽出したリスクと機会における財務的インパクト
- リスクと機会
-
2050年“カーボンニュートラル”ビジョン「SOCN2050」における
2030年の削減目標に向けた設備投資- 2030年までに約400億円
- 2020年~2022年 99億円
- 2023年~2025年 170億円
- 2026年~2028年 80億円
- 2029年~2030年 60億円
-
石炭使用量減少によるコスト減
廃プラスチック受け入れ増量などによる設備投資の進捗に伴い効果が発現し、2026年以降20万t/年の使用量が減少。石炭価格200$/tと仮定した場合の影響額
- 2026年度以降 60~75億円/年
- (2020年~2030年累計390億円の効果)
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石炭使用量減少などに伴う代替原料・熱エネルギー増加による
リサイクル収入増将来、調達が難しくなることを考慮した単価で計算した場合の影響額
- 2026年度以降約10億円/年
- (2020年~2030年累計80億円の効果)
2050年“カーボンニュートラル”ビジョン「SOCN2050」における2030年の削減目標に向けた設備投資額と効果
(億円)
2020–2022年度 | 2023–2025年度 | 2026–2028度 | 2029–2030年度 | 合計 | |
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環境投資 | 99 | 170 | 80 | 60 | 約400 |
償却費 | △19 | △100 | △130 | △70 | △320 |
石炭削減 | +4 | +45 | +190 | +150 | +390 |
リサイクル増 | +1 | +25 | +30 | +20 | 約+80 |
投資効果 | △13 | △30 | +90 | +100 | 約+150 |
※上記の設備投資額と効果は、「SOC Vision2035」と「2023–25年度中期経営計画」に整合しています。
2030年度までの環境投資に対する課題認識
当社グループでは、「SOCN2050」や「SOC Vision2035」に基づき、代替熱エネルギーの収集・使用の拡大による化石エネルギーの削減と、それによるコスト削減とリサイクル収益の拡大に注力しています。
他産業も含め、化石エネルギーからのサーマルリサイクルが進むことによる廃プラスチックや廃油の収集競争の激化という課題が顕在化していますが、セメント工場における除塩・脱塩設備の増強や廃プラスチック前処理設備の設置などの環境投資の段階的な実施と、その効果を発現させることにより、これまで処理が困難だった廃棄物も含めた収集・使用数量の確保によるビジョンの確実な達成を目指していきます。
指標と目標
当社グループは企業活動を通じて重点的に取り組む社会課題であるマテリアリティ(重要課題)の一つとして「地球環境への配慮」を掲げ、リサイクルによるエネルギー代替の推進やバイオマス発電の活用など地球温暖化防止に取り組んできました。また、2020年12月には、「2050年カーボンニュートラル」に向けた具体的な中期目標並びに長期取り組み方針である2050年“カーボンニュートラル”ビジョン「SOCN2050」を策定し、2050年までのあらゆる方策を通じて、当社グループの企業活動をカーボンニュートラルにすることに挑戦するとともに、サプライチェーンを通じて社会全体の脱炭素化への貢献をする為の取り組みを進めています。
今後は、GXリーグへの参画を通じて、2050年カーボンニュートラルへの挑戦をより一層推進してまいります。
セメント⼯場における廃熱発電の活⽤
当社グループでは、セメント⽣産プロセスで、発⽣する⾼温ガスを再利⽤する廃熱発電設備を導⼊しています。
この廃熱発電を効率的に活⽤することにより、⽯炭⽕⼒発電による電⼒と⽐べ、エネルギーコストを削減し、排出される温室効果ガスも削減する事ができます。
バイオマス発電の活⽤
栃⽊⼯場の発電設備は、⽯炭(化⽯エネルギー)の代わりに、⽊質チップなどのバイオマス資源を主エネルギーとして利⽤するバイオマス発電設備で、他社に先駆けて2009年より本格稼働しています。他の⼯場でも⽯炭の補助エネルギーとしてバイオマス資源を積極的に活⽤して温室効果ガス排出削減に貢献しています。
2018年には、住友林業(株)および東⽇本旅客鉄道(株)と共同で設⽴した⼋⼾バイオマス発電(株)にて、バイオマス発電設備の営業運転を開始し、⻘森県の地域の間伐材や周辺鉄道沿線の鉄道林などを使⽤することで、環境に優しいエネルギーを創出しています。バイオマス発電設備から発⽣する焼却灰を、⼋⼾セメント(株)にてセメント製造⽤原料として再利⽤して、地域における循環型社会の構築に貢献しています。
省エネルギー設備の導⼊
当社グループの5⼯場で、全てのキルン(セメント焼成設備)で熱回収効率の良いクリンカクーラー*1を導⼊し、熱エネルギー原単位を低減したほか、冷却空気量の削減によってファンの電⼒消費量についても削減する事ができました。
岐⾩⼯場と⾚穂⼯場ではキルンバーナー*2の改良⼯事および新型バーナーの設置を⾏ってきましたが、⾼知⼯場でも新型バーナーの導⼊を予定しており、エネルギー効率改善による省エネルギーを推進します。
また、⽊質チップ、廃⽩⼟(油分を含んだ⼟壌)、廃油使⽤により⽯炭(化⽯エネルギー)代替率については国内業界トップクラスの実績をあげています。
2023‐2025年度中期経営計画では、更なる代替率向上の為、廃プラス廃プラスチック処理関連設備の増強に取り組み、⽯炭使⽤の抑制を推進し、地球温暖化防⽌に努めていきます。

赤穂工場
- *1 クリンカクーラーは、セメントキルンで焼成された⾼温クリンカを送⾵機によって供給される空気を⽤い急速冷却する装置。冷却の際に熱を吸収した⾼温空気は、キルン・仮焼炉の燃焼⽤空気として活⽤される。
- *2 キルンバーナーは、キルン内でのクリンカ焼成時に、微粉炭や代替熱エネルギーを効率的に燃焼させて⾼熱を得る為の装置。