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ステークホルダーの皆さまへ

「SOC Vision2035」と「2023–25年度中期経営計画」

当社グループの2035年のありたい姿「SOC Vision2035」と、その実現の為の第一ステップである「2023-25年度中期経営計画」を策定して1年が経ちました。この中期経営計画では「既存事業収益改善」と「成長基盤構築」を全社戦略としています。掲げた数値目標に対して、新材料事業や光電子事業は進捗が遅れているものの、全体で目標(2025年度全社営業利益214億円)を達成したいと考えています。

セメント事業は、石炭価格高騰などの影響を受け、2021年度以降赤字が続いていますが、2度の販売価格の値上げを行い、価格が1t当たり5,000円上昇し、ようやく2024年度に黒字回復の目途が立ちました。しかし、時間外労働規制による輸送コストの増加、諸資材の高騰、設備の工事費用の上昇などもあり、利益水準は、まだまだ十分とは言えません。将来も事業を継続していく為には、セメント事業で最低でも100億円以上の営業利益が必要です。その為にも2025年4月から1t当たり2,200円以上の新たな値上げを行い、将来にわたって安定的な事業にしていきます。

国内のセメント需要の低迷が続いています。これは常態化している建設現場の人手不足による着工の遅れや工期の長期化など、複合的な要因が考えられますが、セメントは国民の生命と財産を守る大切なインフラで必要不可欠なものですから、このまま需要が下がり続けるとは思えません。どこで下げ止まるかは、はっきりとしませんが、2023年度の3,400万t台といった水準であれば、輸出数量を増やすなどの対策で工場の稼働率を一定程度維持できるので、生産体制を見直す必要はありません。

新材料事業の主力製品である静電チャックは、ここ数年順調に業績を伸ばしてきましたが、2023年度は半導体市場の低迷から減収減益となりました。回復時期は2025年度になりそうですが、この分野は今後必ず成長が見込まれますので、事業ポートフォリオ変革において重要な役割を担っています。いまは120億円を投じて生産能力を約2倍に引き上げる工事を行っており、2025年度には設備が稼働します。また、事業の拡大にはソフト面の強化も必要です。業績の伸長に合わせ以前から人的資源を投入してきましたが、引き続きこの分野に精通した人財を積極的に採用します。ハード面、ソフト面ともに経営資源を集中させ、次世代製品の開発や新たな領域を開拓することで事業を拡大していきます。

鉱産品事業、建材事業は今後も安定的な業績が見込めます。鉱産品事業は、現在着工している秋芳鉱山船積延伸バースを完成させるとともに、新規鉱画の開発を行っていくことで、事業を持続的に成長させます。

建材事業は、民間設備投資や防衛関連などの大型プロジェクト工事の受注や、都市部での建築土木工事などの受注拡大を図ります。施工面では、建設ICTによる省力化と生産性向上を進めることで人手不足に対応します。

光電子事業は、米中貿易摩擦の影響を受けて以降、厳しい状況が続いています。いまは次世代LN変調器の顧客認定の取得を目指しているところですが、少しでも早く認定を取得し、早期に販売を開始しなければなりません。

株主還元については、この中期経営計画期間で3ヵ年平均総還元性向50%以上を目標としています。2024年度に自己株式取得を行いましたので2023年度と2024年度の2ヵ年平均の総還元性向は51%となる見通しです。2025年度の還元については、今後の利益水準によりますが、3ヵ年を通じて50%以上という約束は果たしたいと考えています。

“カーボンニュートラル”ビジョン「SOCN2050」

2020年12月に当社グループのカーボンニュートラルへの道筋となるビジョン「SOCN2050」を公表しました。

2030年までに石炭を中心とした化石エネルギーの代替率を50%以上に引き上げる目標を掲げ、達成に向けた諸施策を着実に実行しています。

ビジョンの公表から3年以上が経過したことに加え、COP28を受けた政府目標の見直しが進められていることから、このビジョンのリニューアルを進めているところです。セメント産業は、主原料である石灰石の脱炭酸反応から発生するプロセス由来のCO2排出が過半を占め、排出量削減困難業種と呼ばれています。

プロセス由来CO2排出削減に向けてまず取り組むべき方策として、業界団体である一般社団法人セメント協会を中心にセメントのJIS規格改正を働きかけています。これはセメントの中間製品であるクリンカの使用比率を下げ、少量混合成分の上限比率を5%から10%に引き上げようとするものです。改正されればクリンカ比率の低減が進み、CO2の排出量削減に一定の効果を与えるでしょう。

最終的にはCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)などの施策も取り入れながら、多様な方策を組み合わせる当社独自の削減ミックスを組み立てていくことで、カーボンニュートラルを実現することが必要と考えています。一方で、CCSや革新技術を実装する為のコストは莫大な金額になるでしょう。従って、排出するCO2のうち少しでも多くの量をCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)で利活用していきたいと考えています。その為にNEDOグリーンイノベーション基金に採択された炭酸塩生成(人工石灰石・カーボンリサイクルセメント)の研究開発に注力しており、技術の実証・製品化の検討を重ねています。

人財ポートフォリオ

「SOC Vision2035」では事業ポートフォリオの変革を掲げています。変革には最適な人財ポートフォリオが必要になりますが、これまでの当社の人財だけでは質・量ともに不十分なので、必要な人財を積極的に採用するとともに、研修を充実させ社員を育成しています。

合併により住友大阪セメント㈱となってから30年経ちます。これまでは合併後に定めた人事制度を修正しながら制度を運用してきましたが、変革に即した人事制度も必要です。従業員エンゲージメントサーベイを行い人事制度の改訂を行う予定で、いま準備を進めているところです。

また、社員成長の為の投資や給与水準を上げていきたいと考えています。社員が会社に満足し、持っている能力を十分に発揮することで、会社の業績が向上していく好循環が生まれるようにしていきます。

ガバナンスの充実

ガバナンスについても強化していきます。取締役会の実効性評価の方法を変更して、より実効性のある取締役会にすることや、リスクマネジメントの見直しを行い、優先的に取り組むリスクとなった項目に対策を講じていきます。

社外取締役や女性役員の増員が求められていますが、いずれも将来の増員に向けた検討は必要になるでしょう。

指名・報酬委員会で議論しなければならない項目が増える中、開催頻度が少ないというご指摘も株主からありました。他にも役員報酬の株式報酬比率やインセンティブの評価方法、サクセッションプランなど、議論が必要なことは、しっかりと議論しなければいけませんから、頻度にこだわらず必要に応じて随時開催します。

ステークホルダーの皆様へ

社員、お客様、お取引先、地域社会、株主・投資家、全てのステークホルダーの皆様に満足していただけるよう持続的に成長し、企業価値を向上させたいと考えています。「SOC Vision2035」では「存在感のある会社」になる為に、差別化・独自スタイルで優位性を出すこと、時代によって変化するさまざまな環境課題に対して解決策を提供できる環境解決企業であること、常に脱石炭に挑戦していくことを通じ、社会貢献を行っていくことを掲げました。これまで以上に社会での存在感を発揮することで、持続的に成長し、企業価値の向上を目指していきます。

打ち出した事業ポートフォリオ変革を見据え、まずはセメント事業の収益力回復の為に2025年4月からの新たな値上げをやり切るとともに、成長分野である静電チャック事業へのリソース集中の手を緩めず、確実に実行していきます。これからも当社グループにご期待ください。

代表取締役 取締役社長 諸橋央典
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